2025-03-12 / 最終更新日時 : 2025-03-17 teinenjoshi_master とくいなタイムのレポート 3/8(土)定年女子カフェのレポート 毎月第2土曜日に開催している定年女子カフェの奇数月は「とくいなタイム」(※)を行っています。今回の「とくいニスト」は、第7回定年女子フォーラムのパネルディスカッションで、パネラーとして参加した宮下容子さん。その後も変わらずいろんなことをおもしろがる姿勢には、改めて刺激をもらいました。研究生らしく多くの参考図書を紹介しながらのお話は、アカデミックな匂いも感じさせました。※とくいなタイム:定年女子はみんな、豊富な経験や得意なことを持っている。その「得意」をちょこっと教えてもらう時間が「とくいなタイム」です。 ★★★★★★ ■日時:2025年3月8日 1回目 13:30~15:30/2回目 16:30~18:30 ※リアルのみ開催■場所:1回目 中野区産業振興センター/2回目 ウナ・カメラ・リーベラ■テーマ:私の定年女子ライフ~60になったら、もうやりたいことは全部やっちゃえば良いと思う、という話~■とくいニスト:宮下容子さん【プロフィール】1962年東京生まれ。大学卒業後日系証券会社に新卒入社、その後、外資系金融機関で8回の転職を経て60歳で退職。社会人大学院に入学し、現在、複数の財団でアルバイトをしながら女性のセカンドキャリアを研究中。 ★★★★★★ この日、宮下さんが提示した副題は「セカンドエイジからサードエイジへ」。老いと向き合うフォースエイジに入る前の「サードエイジ=人生の黄金期」をどう生きるか。そんな視点で話が始まりました。 ●仕事を辞めたきっかけ【自分のこれまでをふりかえる】お金との向き合い方をふりかえると、20代は「何となく」過ごし、30代でマンションを購入して大きな借金を抱え、40代では積立投資を始め、50代になって気づけば貯金もそこそこには溜まっていたそうで、未来のお金のシミュレーションをしてみたら、贅沢しないで少し働けば「何とかなるかも」という結論に至り、65歳の定年を待たず60歳で会社を退職。しかし「自分の仕事は無駄だったのでは?」と悩み、鬱のような状態に。そこで改めて「本当にやりたかったことは何か」を考え、これまでやりたくてもできなかったことは「アカデミックな仕事」と「クリエイティブな仕事」のふたつだと思い至り、ゼミ見学や科目履修生制度を経て、社会人大学院へ進学しました。●会社を辞めて感じたこと【お金と健康と時間】お金 < 健康。お金の減り方より体力の減り方の方が大きいことに気づいたから。お金 < 時間。自分に残された時間は、想像よりも少ないことに気づいたから。自分が自分の人生に裁量権があることを初めて自覚したそうで、朝起きて1日の過ごし方を自分で決められることに幸福感を感じたと言います。大学院では多くの学びや人とのつながりがあり、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間と出会い、刺激を受ける日々だそうです。論理的思考が鍛えられ、これまで漠然と考えていたことが明確に言語化できるようになりました。書籍「ゆるい場を作る人々:サードプレイスを生み出す17のストーリー」(石山恒貴他共著 /学芸出版社)の執筆に関わる機会も得ました。憧れの本の出版に関与でき、印税を手にしたときの喜びは大きかったそうです。 ●大学院の学びを通じて【仕事への考察が深まる】大学院では、ビジネスの世界とアカデミックの世界の違いを理解しました。日常の些細なことでも「研究」として深堀りすると新しい世界が見えることを知り、「研究の楽しさ」に気づいたそうです。実際に駅前のタクシーを観察した話は、参加者にも興味深く受け取られたようでした。仕事に対する考え方も大きく変わりました。「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」(デヴィッド・グレーバー著/岩波書店)という概念に出会い、今までの自分の仕事もこれではないかと感じたそうです。そんなことから、定年後に本当に必要なのは、大きな仕事ではなく、小さな仕事ではないかと考えるようになりました。「ほんとうの定年後」(坂本貴志著/ 講談社現代新書)で提唱されている「年収300万円以上を稼ぐのではなく、月に10万円の小さな仕事を持つことが大切」という考え方に触れ、日本社会を支えるのは小さな仕事の積み重ねであり、小さな仕事で地域社会と結びつくことが、定年後の現実的な選択肢になるのではないかと思い至りました。また、変化が激しい現代でホワイトカラーの人々が新たなスキルを習得し、地域社会で必要とされる「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」として活躍することを提案している「ホワイトカラー消滅: 私たちは働き方をどう変えるべきか」(冨山 和彦 著/ NHK出版新書728)を紹介し、これからの働き方が変わっていくであろう示唆をくれました。 ●小さい仕事をやってみると・・・「プレミアムエイジ・シニアクルー」としてマクドナルドで働いてみると、若い人に叱られることも新鮮に思うくらいおもしろかったそうですが、シニア世代を都合よく使うファストフード店について書かれたクーリエジャポンのインタビュー記事を読み、問題意識も感じたそうです。ただ宮下さんの勤務先の場合、実際に定年退職後に働くシニア層は男性ばかりで、女性の場合はずっと前からパートで働いてきた人ばかり。現場は非正規で安く働く優秀な子育てママに支えられている現実も知りました。いわゆるキャリアウーマンと言われてきたような女性は、男性よりも実はプライドが高く、小さな仕事などしないのかもしれない、という宮下さんの言葉にはドキッとさせられました。そんな宮下さんは現在、友人の財団の仕事を手伝いながら、地域のNPO活動にも関わっているそうです。●地域とのつながりと「ゆるい場」の大切さ地域活動に参加すると、次々と新たなつながりを生み、芋づる式に人脈が広がっていきます。シニアコミュニティは「おじさんが仕切る場」になりがちですが、若者が運営するコミュニティでは、世代間で不足を補い合うことができます。マンション内のシニアクラブの世話人をしていると、ITスキルの差や、生きてきた文化の違いなど50〜60代と70〜90代の間に大きな壁を感じるそうで、今のうちから若い人とつながることが重要だと呼びかけました。大切なのは「強制されない、自発的に集まる場」「ゆるくつながる場」であること。気軽に参加できる環境こそが、継続的なコミュニティづくりには欠かせない、と。最後に、「とりあえずやってみる。先のことを考えても仕方ないし、残された時間も少ないので、走りながら考えれば良いと思う」とまとめて宮下さんの話は終わりました。 ★★★★★★ 宮下さんの話を聞いて参加者からは、一歩踏み出すことの大切さを感じたという声が多くありました。「昔好きだったことを思い出してやってみようかな」「これまでできなかったことにちょっとだけ踏み出してみよう」という意見や、「今この年齢でここ(定年女子カフェ)に来たことも、きっと大きな一歩だよね」と話す人もいました。また、「退職後の選択肢として大学院への進学があるとは思わなかった」「仕事以外にもいろいろな道があることが新鮮だった」という声も出ました。宮下さんの姿勢に刺激を受け、「とりあえずやってみることが大事」というメッセージが強く心に残ったという声が多く聞かれました。考えすぎず、まずは動いてみることの大切さを改めて実感する機会となりました。ご参加の皆さん、どうもありがとうございました! ★★★★★★ 【次回の定年女子カフェ オープン予定日】 ◇2025年4月12日(土)しゃべり会 テーマ:定年女子的な健康チェック&キープの知恵今年のしゃべり会はオンラインのみ(リアルなし)で実施します。皆さんのご参加をお待ちしています♪詳細はこちら