「定年女子トーク実行委員会」発足の社会背景

定年女子トーク実行委員会を発足させたのは2016年。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、ちょうどその前後に入社した女性が、50代に入った頃でした。

最初の就職先にずっと勤務し続けている女性。
最初の就職先から転職し、複数の会社を経験しながら働き続けている女性。
就職後、退職して起業したり、自営業(個人事業主を含む)として働く女性。
働き方はいろいろですが、これまで働き続けてきた女性はマイノリティでした。
なぜなら、女性で働き続けるのはまだ少なかった時代だったから。
なんせ、私たちが若いころは、25歳を過ぎると「クリスマスケーキ(=売れ残り)」と揶揄され、結婚退職は「寿退職」と呼ばれ、育児休暇も整備されていなかったのですから。

そして50代になった彼女たちの多くが、だんだん「定年」が視野に入りはじめ、いつまで働く?これからどんなふうに働く?という思いを抱えるとと同時に、私はこれからどうなるんだろう?、私はどうしたいんだろう?どうするんだろう?と思うようになったのではないでしょうか。
「定年」と言っても、それは必ずしも会社の定年だけではありません。会社員であっても、自営業や派遣で働く人にとっても、年齢と共に働く環境が変わりつつあることを実感する人は少なくないはずです。

根底にあるのは「これからも楽しく生きていきたい」

委員会発足の前に私たちが気にしていたのは、これからも楽しく生きていくことでした。
正直なことを言えば、会社が決めている定年までしっかり働き続けるかどうかはどうでもよかったんです(苦笑)。

一足お先に会社を卒業して新しい仕事を始める、ガツガツからゆるゆるに働き方を変える、定年まで勤め上げる、生涯現役を目指して会社を辞めてもガツガツ働き続ける場所を探す、仕事はもうしたくないから趣味に生きる…等々、いろんな形があっていい。人によっていろんな選択があるでしょうが、大事なのは、これからも楽しく生きていくことだ、と。

これまで一生懸命働き続けてきて、たとえ会社が決めた「定年」がやってきたとしても、それはゴールじゃない。私たちの人生はそこで終わりじゃなく、それからもずっと続くのです。
だから、定年女子トーク実行委員会の「定年」の定義は、これからも楽しく生きていくための「働き方のリセット」。会社の定年にはこだわっていません。
「定年女子」とは、「定年=働き方のリセット」を意識し、これからの生き方を考える女性たちのことを指しています。

これからのために必要なこと

これからについて考えてみると、わからないこと、悩ましいこと、応援してほしいことなどがいろいろある。
楽しそうに活動している先輩諸姉を見ていると、つながり(コミュニティ)が大きな力になっているようなことも垣間見える。これからはコミュニティが重要なはず。

会社を辞めて終活領域で仕事を始めながらキャリアを学んだ石崎公子と、オモロウゴ(おもしろい老後)に向けてWeb magazineを始めた勝木雪子は、そんなことを毎日喧々諤々語り合っていました。その結果、始めたのが定年女子トーク実行委員会だったんです。

お金のこと、社会保険や社会制度、働き方とキャリア、体調の変化やヘルスケア、老親問題などなど、マイノリティの私たち定年女子にとって大事な情報提供や情報交換の場を作りたいと思いました。

情報交換の場は、ホッとできたり勇気を与えたりもするかもしれないし、一つの居場所になるかもしれない。それによって、これからの人生を楽しくするための場づくりができたらいい。将来的には、私たちにとって有益な情報や1人1人の貴重な経験や考え方をコンテンツとしてまとめることができれば、さらに他の人たちにも役に立つにちがいない。

おぼろげながら、そんなことを考えてスタートしました。

カギとなるのは“トーク”

いろんな人がいて、それぞれがいろんな働き方をしていて、みんな違う。通り一遍のことを教わるだけじゃ身につかないし、正解なんてない。

だからこそ、他の人の経験や事例の中に自分のためのヒントもあるはずと考えて、おしゃべり(トーク)の力を信じて進めてきました。そもそも喧々諤々の語り合いから始まったことでもあるし。

「定年女子カフェ」では、「こういう話、他ではできない」「会社は教えてくれない(or 会社には聞けない)」「元気をもらった」などの声がしばしば聞かれます。

今ではセカンドキャリアを学ぶための塾もできてきました。定年女子トーク実行委員会の役割はその手前、おしゃべり(トーク)をきっかけに気づきを得ることなのかもしれません。

Q)どうして「女子」なの?

男性の話だと思っていた「定年」が、自分ごとに近づいてきたのに、世の中に出回る情報は男性目線の話ばかり。女性のための情報はほとんどなかったし、そういう話ができそうな場もありませんでした。

働いてきた女性同士でこれからのことを話したり情報交換しながら、時には愚痴を言ったり悩み相談をしたりされたりできるような場があればいいと思いました。

Q)どんなことを始めたの?

最初はFacebookを通じて、あちこちに点在する女性に役立ちそうな情報を、一方的に少しづつ発信し始めました

2019年になって、定年女子のFacebookグループをスタート。その後、リアルな活動(「定年女子フォーラム」や「定年女子カフェ」)や電子書籍の発行などを開始。

Facebookグループのメンバーは、今では660人(2023年2月)を超えました。

Q)今、定年女子トークのグループにはどんな人がいるの?

今まさに定年までのカウントダウンに悩んでいる人、働き方をどうリセットするかを考え中の人、まだ他人事だけど一応考えておきたい人など。年齢はとても幅広いです。

一方で、委員会を発足してからの6年半の間に、早期退職を決断した人、キャリアチェンジした人、まさに会社の定年を迎えた人もいます。