第3回 定年女子フォーラムを開催しました(後半)
もっと聞きたい、もっと話したいトークの時間
三つのグループに分かれてのトークは、休憩をはさんで2ラウンドです。
A)定年後に継続して勤務を続けている本多祐子さんを囲んでお話をするグループ
B)定年を機に退職、起業した小野田嘉子さんを囲んでお話をするグループ
C)今のお話を受けて、自分たちで語り合うグループ
2回とも同じグループでもいいし、途中で違うグループに変わってもいいし、どこのグループで話すかは参加者自らが選ぶ形です。各グループのファシリテーターは、キャリアコンサルタントにお願いしました。
キャリアコンサルタントというと転職相談を思い浮かべる人が多いようですが、実際は職業選択などの相談や助言を行う専門職の国家資格。今回は、さらにこれまでの経験や生き方もキャリアとして捉えるキャリアコンサルタントの方々でした。
それぞれのグループで出たお話を聞いてみました。
基本は75歳になったらじぶんはどうなりたいか
Aグループでは、定年後の働き方をどうするか、本多さんが選択の前後に考えていたことを、さらに詳しく深堀して聞きました。
ちょうど私たちが働いてきた時代は、女性の働く環境や法律がどんどん変わっている時期。しかも本多さんの会社には定年後の働き方に向けてもいろいろな制度があり、その制度を調べてみると、人によっては選べたり、選べなかったり。しかもそれが少しずつ変わるので、ダメかと思っていたことが可能になったりもしたそうです。本多さんからは、選択を考える上ではそういうことを知っておくことも大事だというアドバイスをもらいました。
本多さんの元になる考え方は、70歳、75歳になったら自分はどうありたいのか、どうしたら楽しい自分でいられるだろうか、ということ。常にそれを中心に考えていたそうです。おカネ、健康、遊び、やり甲斐、そういういろんなものを含めて楽しいことを考えたそうです。
専門職から総合職に変わり、自分のやりたいことがやれなくなったときにはどういうふうに考えましたか?
参加者からの質問に対して、「寂しさもあるけど、与えられたら一生懸命やる。今考えると、それが役立っている」。
部署異動など不本意に思うことはありませんか?
「やりきれてないと消化不良な気持ちがあるかもしれないけど、自分の考え方やあり方にフォーカスすることによって今の状況を受け入れることができるのかも」と。“不本意”の意味を自分自身でよく考えてみては? 今の時点で不本意に思うかもしれないけど、もう少し広い視野でみると違ってくるかも、と温かい言葉をいただきました。
本多さんは、70歳、75歳のとき、地域に愛されるおばあちゃんでありたい、という思いがあるそうです。そうなるためにはどうしたらいいか。例えば今不本意なことも、そのときに役立つかもしれない。そう語る本多さんの言葉は、これからを考える上でとても参考になります。
いろんな選択肢があるなかで選ばない道を考えたとき、どう思いますか?
違う道を選んだら今の人たちに会うことはできなかった。選ばなかった道はなかった道。きっぱりとそう答える本多さんには清々しい感じがありました。
今の仕事がヒマ、役割も薄くなりモヤモヤしている今をどう考えたらいいだろう?
本多さんからは、「制度の説明がないからモヤモヤしているのかもしれませんね」と。会社の制度は年ごとに変わるかもしれません。常にチェックし、考えていくとよいかもしれない、と。本多さんにとっては、55~60歳がすごく早かったそうです。でもこの感じ方も人それぞれ。仮に定年が10年先でも、ずっと先と思う人もいれば、10年しかないと思う人もいる。それぞれの考えで考えていくのがよいですね。
やりたいことがあるなら、
カラダが動くうちにおカネを投資してでもやるべき
起業した小野田さんは、英検準1級、MS検定やパワーポイントの資格など仕事関係の資格のほかに、アロマセラピスト、ヨガインストラクター、剣道3段、折り紙協会の資格などいろいろな資格をお持ちです。Bグループでは、その小野田さんが起業にあたってどんな準備や勉強をしたかの質問が出ました。
小野田さんは退職の8ヶ月前から創業塾に通い、人脈作り、著作権、ビジネスモデルの作り方などを学んだそうです。中でも人脈作りには注力されたとのこと。小野田さんの言葉を借りると「応援団」が大切で、現在バラ折りのお弟子さん(生徒さん)が20人。商工会議所、政財界に細々とアプローチをされ、応援してくれる人を得るための努力を惜しまないことが伝わりました。
Bグループでのお話をお聞きすると、小野田さんはSNSを駆使しており、ホームページを作るのにそれなりの費用をかけ、Webマーケのコンサルを受けるなど、必要な投資をしていらっしゃいます。事業を進めるためにご自身のフォロワー数を増やし、そこから公式HPにつなげ、体験セミナーに来ていただく、という流れを戦略的に進めていらっしゃいます。
小野田さんによれば、何歳のときにどうありたいか?のイメージが大事、とのこと。もしもやりたいことがあるなら、そう思ったとき、カラダが動くうちに、おカネを投資してでもやるべき!と強い言葉をいただきました。そして自分を信じることと、もしも自分が萎えそうになったときでも信じてくれる応援団を作っておくことが大事なことだ。と。
小野田さんの力強い言葉を聞き、Bグループの方の中には、起業する人はこんなにエネルギッシュなんだ、と感じた方もいたようです。
もはやベテランで仕事も早い、若い世代に譲るけど
自分はモヤモヤ「霧の中」
参加者同士で語り合うCグループは、まずは参加動機をきっかけにお話ししたそうです。50歳を過ぎると仕事もベテラン、やることも早くちょっとヒマになる。若い人に譲ることで自分の居場所がないと感じたり、いづらくなったり。再雇用の先輩を見るとどうなんだろう?ずっとこの組織にいていいのか?他の世界を見てみたい、でも何をやっていいかわからない。
そんな話が出てきました。中には「霧の中」という表現を使った参加者もいたとか。
そういうモヤモヤに応える一つのアイデアとして、Cグループでは「兼業」の話題が出ました。本業で働きながら、リモートで参加できるのだそうです。専門的なスキルがなくても参加できるところもあるようで、実際にそれを実践されている方がいました。そんなことを試しながら、もしかしたら定年後の生業になるかもしれない、というひとつのヒントが出てきました。
延長するか?
役職定年で年下上司と自分はうまくやっていけるのか?
そんな思いを抱えている人がいる一方で、会社の定年は65歳だけど、大学院に行くことを決めている人がいました。
参加者の中には看護師さんがいることがわかると、更年期の悩みについての質問も飛び出したそうです。看護師さんからの答えは「前向きでいること」、というところで時間切れになりました。
ゲストスピーカーからのメッセージ
今回、お話しくださったゲストスピーカーのお二人から、最後にメッセージをいただきました。
★★本多祐子さんから
抱えているモヤモヤは、似ていたとしてもきっとみんな違います。でもこういう場に出てくることがきっと一つのきっかけ。そのモヤモヤを言葉にしたり文字にしたりすると、違うことが気になっていたことに気づいたり、見えないものが見えたりすることがあるので、ぜひオススメします。
コロナもあって、副業とか兼業とか、企業が寛大になってきました。働く働かないだけでなく、パラレルキャリア、自分の持っている今の軸となるものの他に、大人の学び直しをするきっかけがあると、今の会社で続けるか、自分にはもっとやりたいことや向いていることがあるかを計るきっかけになると思います。
★★小野田嘉子さんから
毎月お給料をもらっておカネがある今! 投資するんだったら今!です。もし、こんなことやってみたいな、となんとなく思っているならば、今ならできるよ、と言いたいです。私は、会社を辞めたときにすごく喪失感を感じました。でももう一つ感じたのが、自分が井の中の蛙だったこと。自社と同業他社のことは知っていたけど、いかにごく一部しか知らなかったかってことに気づきました。
だから人脈を作るんです。いろんな分野の考え方、やりかた、モチベーションを知ることができます。副業ができるようになってきた今、2足のわらじを履いて、行動し、お金も投資すること。始めようと思うならSNSの導線をはり、情報を発信して自分のファンを作る、などの下積みをぜひ始めてみてください。
定年女子の「これから」
委員会では、「定年」を「働き方をリセットするタイミング」と捉えています。それは、勤務先が変わる、責任が変わる、仕事内容が変わる、改めて続けると決める、など。そして、人生100年時代の定年女子の不安を、おカネ(働き方と表裏)、カラダ、つながり、の三つだと言い続けてきました。
この三つの中で自分が気になることが何なのかを知り、今から準備していこう。そして、定年後もたとえどんなにゆる~くでもいいから何かしら働き続けよう。それが、これまで働き続けてきた定年女子各々の不安を払拭するうえではよさそうだと考えています。
考え方、選択は、人それぞれですが、それぞれの選択をした今回のゲストスピーカーお二人のお話は、参加者それぞれが「自分はどうありたいか」を考えるためのきっかけになったに違いありません。定年女子の皆さん、ご一緒に「これから」をどんどん考えていきましょう。
今回のフォーラムに向けて、ゲストスピーカーのお二人には約1年近く前から相談し、スピーカーとして快諾くださったこと、心より感謝申し上げます。
また、グループディスカッションのファシリテーターを務めてくださったキャリアコンサルタントの皆さんも、本当にどうもありがとうございました。
今回のフォーラム、多くの協力者の存在と、参加者の皆さんのおかげで開催できました。
この場を借りて、重ねて感謝申し上げます。
また、今後に向けての大きな励みになりました。
定年女子トーク実行委員会は、引き続き定年女子のこれからに向けて考える場を提供していきます。
皆さん、またぜひお会いしましょう!
参加した皆さんの感想から
・楽しく学びの機会となり勇気が出ました。
・ロールモデルがいないため参加しました。皆さんの悩みやいきいきとされている姿を知り、今できることを始めます。楽しい時間があっという間でした。
・自分の全然知らない世界で、それぞれの場所で、一生懸命前向きに生きようとしている先輩女性の話を伺える機会は本当に貴重です。
・みんな迷いながらも、最善の選択を探しているんだな、独りじゃないんだな、と思いました。初参加でしたが、疎外感も全く感じず、楽しい時間を過ごせました。
・ちょっとまず調べてみようかなと思うようなヒントをいただき、有意義な時間でした。
・グループを自分で選べたので、自分の思いに近い方に会えたしお話が聞けました。スピーカーの方を含め、ファシリテーターがキャリアコンサルタントさんだったことも、安心感があってお話しやすかったです。
・モヤモヤの解決策が一気に見つかったわけでも、明確な目標ができたわけでもないけど、自分にとっての今後の生き方の考え方のヒントをもらった気がしました。
・オンラインで3時間、大丈夫かな?と思っていましたが、あっという間でした。おふたりのゲストスピーカーのお話は、とても刺激になりました。
・こういう場があって、同じように思ってる人もいると思えたり、ネットワークが持てるだけでも、本当にありがたいことです。
【主催】
定年女子トーク実行委員会
◎「定年女子」とは、自分の「定年」を意識し始める40代50代女子のこと。
会社の雇用のされ方が変わったり、ガツガツ働くのをゆるくしたり、新しい仕事を始めたり、家族を養うためだけではなく自分のために働くときなど、定年女子トーク実行委員会では、働き方をリセットするタイミングを「定年」と称しています。