9月12日(土)定年女子カフェのレポート

毎月第2土曜日に開催している定年女子カフェの奇数月は「とくいなタイム」※です。

9月の定年女子カフェは、大学の技術職を53歳で早期退職し、鍼灸マッサージの免許取得の勉強をするために上京、63歳で治療院を開いたラジさんを「とくいニスト」に迎えました。職種も働き方もがらりと変えた転身のリアルと、季節の変わり目に役立つセルフケアをお話しいただきました。

※とくいなタイム:定年女子はみんな、豊富な経験や得意なことを持っている。その「得意」をちょこっと教えてもらう時間が「とくいなタイム」です。

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■日時:2026年9月12日(土)
 1回目 13:30~15:30/2回目 16:30~18:30 ※リアルのみ開催

■会場:東京ウィメンズプラザ 2階 第2会議室

■テーマ:定年なく、カラダに関わる仕事へ ~転身のリアルと、季節の変わり目セルフケア~

■とくいニスト:山内美代子(ラジ)さん
【プロフィール】
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師。1960年生まれ、九州育ち。
大学で農芸化学を学んだあと、福岡大学体育学部(現スポーツ科学部)の運動生理学研究室に技師として31年間勤務。職場のテーマ「生活習慣病の運動療法」に反して、自身は運動が苦手。うつや身体の痛み、婦人科系・消化器系の不調を経験しながら、さまざまな療法や心身技法を探し続ける。53歳で早期退職して上京。鍼灸マッサージの専門学校に通い、2017年に国家資格を取得。業務委託やパート勤務を経て、2023年、杉並区南阿佐ヶ谷にRAJI鍼灸マッサージ院を開院。

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いつものように自己紹介でどんな人が参加しているのかを知ってから、ラジさんにバトンタッチです。

実はラジさん、東京で知り合いも少なかった頃に「誰かとおしゃべりできたらいいな」と、定年女子カフェに立ち寄ってくださいました。当時はまだ定年女子カフェが始まったばかりで参加者もまばらだったので、私たちも来てくれたことが本当にうれしかったことを思い出します。

■はじめに、セルフケアと温活
このところの急な気候の変化から、ラジさんはお話の前後をセルフケアで「サンドイッチ」する構成を考えたそうで、「体の声を聞く」ワークからはじまりました。ワークでは、「今の体の感じ」を考えずにパッと紙に書き出します。いいも悪いもなく、どんなことでも大丈夫。今パッと感じたことを大事にしてほしい。これはこの日を通してのメッセージでもありました。

続いて温活。机の上にはラジさんが用意してくれた、「温活中」と書かれた火を使わないお灸が置かれています。お灸は使い捨てカイロのような仕組みで、空気に触れるとじんわり温かくなります。
紹介されたツボは、手と足に2つずつ。①手の親指と人差し指の谷間にある合谷(ごうこく)、②手のひらの真ん中にある労宮(ろうきゅう) 、③膝下の外側にある足三里(あしさんり)、④内くるぶしから指4本分ほど上、すねの骨のキワにある三陰交(さんいんこう)。それぞれどんな症状のときに適したツボかが説明され、参加者の皆さんは思い思いのツボにお灸をペタッと貼っていきます。

「この症状にはこのツボ」情報をしばしば目にしますが、ラジさんはあえてそこはもう少し丁寧に考えます。症状がいつからあり、どんな時に楽になるのかを一人ひとり伺ってはじめて、その人の「取説」が見えてくるから。情報があふれる今だからこそ、大事にしたい姿勢だといいます。

■更年期は人生の秋、対処よりも「土台」を見直す
現在66歳※のラジさん。40代から50歳前後は心身ともにどん底で、今の方がずっと元気に暮らせているそうです。

更年期や定年を考える年代は、人生でいえば「秋」。この時期は、体力が消耗して食べたものが栄養になっていなかったり、役割の変化やこの先への迷いなどが積み重なったりします。そうした「土台」の上に、女性ホルモンの減少がダメ押しとなって、症状が強く出るという説があるとのこと。だから「この症状にこのサプリ」と言う前に、眠れているのか、栄養になっているのかを見直す。私たち世代は、それを普段の暮らしの隙間でやるのが消耗しないコツのようです。

土台である自分の体を捉える方法の一つが、東洋医学の「五臓六腑」。臓器の名前を使いながら体を「働き」で見る考え方です。目の疲れやイライラは「肝」、秋の物悲しさや風邪は「肺」、免疫系は「大腸」、40代を過ぎて一番補いたいのは生命エネルギーをつかさどる「腎」など。科学の世界にいたラジさん、最初は「眉唾やろう」と思っていたそうですが(笑)、臨床では案外使える、と実感しているのだとか。

※2026年9月12日現在

■白衣の技術職31年、神経症のベテランの転機
ここからはラジさんのライフシフト「定年女子のこんな道もある編」です。農学部を卒業後、福岡大学に採用されスポーツ科学部(当時の体育学部)の技術職として31年。運動が大の苦手なラジさんは「怖いところに来てしまった。お金を貯めて早く辞めよう」と思いながら働いていたとか。白衣を着て試験管を振る、はた目には安定した仕事。けれど、希望と違う道で何となくうまく働けてしまう自分への葛藤から、心も体も小さくボロボロになっていったといいます。

助けを求めてさまよう中で残ったのが、30代で出会ったアドラー心理学と瞑想。ただしアドラー心理学は、当時は学ぶ側ではなく、カウンセリングで相談する側の「ベテランクライアント」でした。のちに日本アドラー心理学会の会報にラジさんが寄せた文章のタイトルは「神経症のベテランから息抜く仕事人へ」。今では日本アドラー心理学会認定カウンセラーとしてカウンセリングも行っています。

転機は46歳の時。定期的に通っていたクリニックで突然「卵巣がんの疑いがあります」と告げられます。「こんなにぐずぐず言いながら働いてきて、まだ何も成し遂げてないじゃない」、そう思ったといいます。

この頃から、瞑想のワークとして体に触れることを始めました。ラジさんいわく、瞑想は精神世界のことと思われがちですが、本来は「体のこと」。自分の中では「まだ何もやってない、働いてない」という気持ちがずっとあったので、ちゃんと人に触れてちゃんと仕事をしたいと強く思うようになり、この道を選んだのでした。

そして53歳、早期退職制度で退職して上京。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格をまとめて学べる学校に入り、3年間の学生生活が始まりました。

■「バットを振り続けるんだ」、免許取得から開院までの6年
2017年に57歳で免許を取得。2023年の開院までは、まさに「なんでもやった」6年間です。出張施術、レンタルサロンやほかの鍼灸院のブースを借りて施術、単発の講座、訪問鍼灸マッサージ、デイサービスの機能訓練指導員、コロナ後遺症のクリニックでのオンライン問診、さらにはスーパーの試食販売まで。

免許があれば年齢に関係なく雇ってもらえると考えていたけど、「すごく甘かった」とラジさん。免許があっても時給は最低賃金程度のところがほとんど。コロナ禍もあり厳しい現実、細い糸を渡るような日々でした。そんな低空飛行の時期にかけられた言葉が「バットを振り続けるんだ」。三振しようが、バットを投げ捨てずに振り続けるしかない、と思ったそうです。

■仕方なくの開院から4年目、「聞く」治療院
開院も、志や勇気があってのことではなかったといいます。借りていたシェア鍼灸院が急に使えなくなり、煙の出るお灸OKの場所も見つからず、自宅近くの業務用に使えるマンションにパッと入った「仕方なくの開院」でした。

「どうやったら新しい人に見つけてもらえるんだろう」から始まり、4年目の今は予約が1カ月先まで埋まるほどに。施術は70〜90分、ときには2時間近く。お話を伺い、触れて、鍼をします。とくに問診を大事にしているそうですが、ただし、世にいう「傾聴」はしていないとのこと。施術の見立てを考えるのに加えて、アドラー心理学の視点で、私にできることは?この人の強みは?と見極めながら聞いているので、一見ネガティブな話が続いても大丈夫なのだとか。

■「死ぬ時に後悔する方を選びなさい」
ラジさんを支えてきた言葉も紹介されました。一つは、30代半ばで初めて受けたカウンセリングで、アドラー心理学の先生から言われた「迷ったら、死ぬ時に後悔する方を選びなさい」。よく聞く「後悔しない選択」とは真逆です。50歳頃、安定した職を手放すのは絶対に後悔すると頭では分かっていながら、あえてその道を選んだラジさん。後悔すると分かっていて自分で選んだのだから、それ以上ブツブツ言いようがないと。

もう一つは、インドの瞑想の師OSHOの「Courage(勇気)」というタロットカードの言葉。硬い殻に守られた種のままなら安全だけれど、芽を出し始めたら、日照りがあっても虫が寄ってきても、花が開いていくほうへ向かっていくしかない、というメッセージです。
ラジさんの勇気は、困難をものともしない勇ましさではなく「もう芽が出ちゃったから、しゃあないな」の勇気。ちょっとネガティブに聞こえる言葉に勇気づけられてきた、という話に深く頷かされました。

■昔の私に言いたいこと
もっと頑張れる、と自分を馬車馬のように鞭打っていた40代。そんな昔の自分に言いたいことは、「体の声を無視しないで」。今も時々やってしまうそうですが(苦笑)。車だってメンテナンスしなければ動かなくなるのに、人間の体はパーツも替えられない。自分の体で実験しながら「自分の取説」を書き加えていくことを勧めるといいます。

個人事業主になって社会保険料の重さを実感し、会社員のありがたさや、組織だからこそ発揮できる力があったことにもあらためて気づいたそう。昔の自分に「あれも良かったんだよね」と伝えたいと。そして、頭の中だけで考えず、相談できる人につながり、直接会って話を聞き、ザワザワやウキウキといった体の感じを確かめてみること。転身を考えている人にも、そうでない人にも、定年女子世代に響くメッセージでした。

■締めくくりのセルフケア、息を抜く
締めくくりは、全員で立って呼吸のセルフケア。胸や脇腹、背中をトントンとタッピングし、膝をゆるめて体をシェイク。続いて、吐き切ったところで鼻をつまんで5回うなずく「CO2活」、4つ吸って・吐いて・止めるトライアングル呼吸、ハミングしながら楽に長く吐く呼吸を体験しました。

息止めは苦しくなる前にやめるのがポイント。こうした呼吸のセルフケアは、寝る前や気持ちがザワザワする時にも使えるそうです。

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そのあとは、テーブルごとのグループトーク。「体の感じを書いてと言われても、何も出てこなかった」「自分では感じないのに、触ると悪くなっていることがある」「頑張るでもなく、無意識に頑張っている」「気づかないふりをしているのかも」など、体の声の聞きづらさをめぐって話が弾みました。

最後に、参加者から一言ずつ感想をいただきました。

「穏やかにお話しされる姿からは、そんな葛藤があったとは見えず驚きました。『迷ったら後悔する方を選べ』という言葉は、まだ咀嚼しきれていません」

「穏やかな話し方に魅了されました。開院までの時期のラジさんに会ってみたいと思ったほどです」

「気になっていたアドラー心理学に、ここで出会えるとは。体の声を聞くのが苦手で突っ走りがちなので、ちゃんと聞いていかないと、と反省しました」

「友達とはいつも『後悔しないようにしたいよね』と話していたので、真逆の言葉にびっくり。時間をかけて自分なりに解釈していきたいです」

「自分の仕事ではないと思いながら31年続けてこられたことが素晴らしい。その辛抱があったからこそ、今があるのだと感銘を受けました」

「感じたことがあったら、まずちょっとだけ動いてみる。そのためにも体が元気でないと。息を吐くワークは、とても楽に感じました」

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穏やかな語り口の奥にあった、長い葛藤と「しゃあないな」の勇気。決して華々しい転身物語ではないからこそ、「体の声を聞く」「息を抜く」という小さなセルフケアが、ラジさんの歩みと重なってじんわり沁みてきます。お灸のポカポカとともに、その言葉を持ち帰った方も多かったのではないでしょうか。

とくいニストのラジさん、ご参加くださった皆さま、ありがとうございました!

(文責:勝木雪子)

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【次回の定年女子カフェ オープン予定日】 
◆10月は定年女子フォーラムを開催!
10月は定年女子カフェをお休みし、10月17日(土)に「定年女子フォーラム」を開催します。“私”の未来を考えるためのワークショップと、5人のパネラーをお招きしそれぞれの現在地を語っていただくパネルディスカッションを行います。ぜひご参加ください!
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◆2026年11月14日(土)
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